研究開発
SQUIDを用いた能動的磁気イメージング
研究概要
本研究では、再生医療などの効果や安全性の検証ができる装置の開発を目指して、従来の受動的なSQUID磁気センシングでは得られない情報も獲得できる技術を開発するものである。具体的には、SQUID-MRIの開発、超音波エコー装置との情報統合、脊磁計の開発などである。SQUID-MRIの開発においては、組織の違いによる縦緩和時間の定量的測定を実現し、正常細胞
と腫瘍細胞の判定を定量が期待できる結果を得た。超音波エコー装置との情報統合においては 2つのモダリティの同時動作と位置合わせに成功し機能と形態の2情報を獲得できることを示した。
脊磁計においては、頚部に加えて腰部の脊髄神経から発生する磁場をとらえることに成功し、非侵襲で脊髄神経の信号伝播の判定が可能になった。これにより、従来のMRIなどの形態情報検査での擬陽性による無駄な手術を避けられる可能性がある。
研究成果
SQUID-MRIにおいては、Free Induction Decay信号を観測するために帯域分離型磁束ロックループ回路と
超伝導シールドをもつSQUIDセンサを新たに開発した。これにより、測定対象試料を励磁するためのコイルから
発生する大きなアーチファクトを軽減することが可能になり、信号検出に成功した。次にこの信号から核磁気共
鳴の縦緩和時間を定量的な測定の実験を行ない、成分の異なる試料について縦緩和時間が明瞭に異なることを確認した。結果を詳細検討することにより、縦緩和時間の分散も計算できることを明らかにした。これらを用いることで組織の違いを定量的に測定することが可能になり、例えば正常細胞と腫瘍細胞の定量的な判定が可能になる
と期待される。さらに、画像化についても研究を進めてファントム試料について良好な画像を得ることにも成功した。
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図1 SQUID?MRI |
超音波エコー装置との情報統合については、磁場源の空間分布と時間変化を同時にとらえことにより形態と機能の情報をあわせて取得することを目指し、SQUID
磁束計と超音波エコー装置の同時動作を試みた。後者から発生する大きな磁気雑音を低減するために、上記の帯域分離型磁束ロックループ回路を活用するとともに、SQUIDセンサ自体をロバスト化するために高次微分型検出コイルを開発した。これらの試みにより、 2つのモダリティーの同時動作に成功した。さらに、これらの情報を統合するために磁気マーカを超音波エコー装置のプローブに設置する試みを行ない、位置の情報の統合も行なった。
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図2 超音波エコー装置との情報統合 |
脊磁計の開発においても、上記の帯域分離型磁束ロックループ回路を活用により不要な信号を除去する仕組みを構築し、頚部に加えて腰部の脊髄神経から発生する磁場をとらえることに成功した。脊磁計は非侵襲的に脊髄神経を信号が伝播するかどうかの判定ができる。これにより、従来のMRIなどの形態情報検査での擬陽性による無駄な手術を避けられる可能性がある。この装置が医療承認を受ければ大きな波及効果があるものと思われる。
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図3 脊磁計 |