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ほくりく健康創造クラスター
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研究開発
医工融合による動脈硬化の診断と治療の先導的研究/血管病変部位の治療
研究代表 金沢工業大学ゲノム生物工学研究所 教授 松田武久
U R L http://wwwr.kanazawa-it.ac.jp/gbl/index_ja.html
参画機関 金沢工業大学、金沢大学、ニプロ株式会社
研究概要
本研究は、流血中に微量存在する内皮前駆細胞をデバイス(ステントおよび小口径人工血管)の血液接触面で選択的に捕捉し、迅速に内皮化を誘導して、恒久的な非血栓のバイオインターフェースを構築することを目的とし、次のサブテーマのもとに実施した。
  (1) 血管前駆細胞の捕捉の作業原理の提案と表面固定化リガンドの選定
  (2) ステントおよび人工血管のマトリックスの選定と表面コーティング技術
  (3) 選択した固定化リガンドによる前駆細胞の接着・増殖・分化誘導能の検証
  (4) 動物実験による設計概念の検証

  ブタへのステント留置実験では、留置早期に内皮前駆細胞の捕捉と迅速内皮化が達成でき、プロトタイプのバイオインターフェースを構築した。
研究成果

1.作業原理とVEGF固相化:
(1) 対象とする蛋白質を内皮およびその前駆細胞表面にのみ発現しているレセプターに対するリガンド分子群から、単核球(前駆細胞を 含む)および内皮細胞の接着・増殖能をもつ分子VEGF(内皮増殖因子)を系統的研究により選択。

(2) VEGF固相化表面での細胞内シグナル伝達機構(VEGFレ セプタ、ERK、FAKおよびAkt)の持続的発現(りん酸化をWestern BlottingおよびElisa法によって検出)および単核球のVEGFレセプタの経時的な活性化を誘導した。

図1 血管内皮前駆細胞に特有に発現しているレセプターと基材表面に化学固定する


2 .マトリックス工学:
(1) マトリックスT:光反応性ゼラチン、水溶性可視光ラジカル開始種、およびヘパリン混合液に可視光照射してゲル製作。
(2) マトリックスU:水中で柔軟性があり、表面に蛋白質と共有結合できる官能基を有するエチレン・ビニルアルコール共重合体を選択。

図2 選定したマトリックスポリマーと蛋白質表面固定化 図3 超音波アトマイジングスプレーコーティング装置によるマトリックスポリマーのコーティング。
走査顕微鏡写真:拡張前(左)、拡張後(右)


3 .ステント工学:
(1) ステントへの薄膜コーティング技術は超音波アトマイジング装置で達成。
(2) ブタ頚動脈へのステント留置(計124)では、留置 2 日で内皮細胞表面に特有な表面抗原を発現する細胞が接着、留置 2 週間では、極めて高品位の内膜組織が形成された。

図4:ステント留置2日:細胞の付着(走査顕微鏡写真) 図5 ステント留置2日:免疫染色による血管内皮前駆細胞の付着


4 .人工血管工学:自家製作した小口径人工血管の内腔へのマトリックスTの搭載は光プローブのサイズが大きすぎて内腔の均一ゲル化が出来なかった。一方、 MatrixU溶溶を薄膜コーティングした人工血管をブタ頚動脈へ埋植すると、 4日目では内皮様細胞が付着したが、より長期ではフィブリン血栓の形成を抑制 できなかった。MatrixUに用いる溶媒のために、人工血管が溶ける場合が多く、柔軟であった人工血管が硬化し吻合不可になる場合が多く、実験を中断した。

図6 自家製作による高電圧紡糸技術による小口径人工血管とマトリックスの内腔コーティング


5 .まとめ:
VEGF固定化表面は流血下で内皮前駆細胞を捕捉し、迅速なる内皮化を達成した。大表面積を有する人工血管では、ヘパリン徐放化機能の付与が必 須であるといえる。


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