文部科学省 地域イノベーション戦略支援プログラム 富山・石川地域
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ほくりく健康創造クラスター
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研究開発
広汎性発達障害の診断・治療・経過観察総合システムの開発
研究代表 金沢大学医薬保健研究域医学系 教授 三邉義雄
U R L http://web.kanazawa-u.ac.jp/~med20/aisatsu/pages/list.html
参画機関 金沢大学、金沢工業大学、富山大学、浜松医科大学、福井大学、東京学芸大学、ベルン大学、九州大学、北陸先端科学技術大学院大学、東京大学先端科学技術研究センター、 カリフォルニア工科大学、ロンドン大学、横河電機株式会社、株式会社島津製作所
研究概要
 広汎性発達障害(PDD)は、その有病率の高さ(1.16%)からも、病態生理の解明が社会的に急務である。脳機能検査による客観的指標を確立して早期診断が可能になると、早期介入が可 能になり、その社会的利益は計り知れない。今回PDDの早期診断を実現するバイオマーカーとしての幼児用MEG-NIRSマルチモダリティ脳機能計測装置の開発と臨床応用研究を進めた。今までに類を見ない今回の装置により、PDD患者を含む計220以上の幼児より脳機能データを収集した。その結果、PDD児童は、定型発達でみられるような左に側性化した脳内の機能結合が乏 しいこと(投稿中)、前頭葉の脳血流の動態の異常(論文受理)を認めた。これらの客観的生理学的指標に基づいて、本研究の最終目標である、広汎性発達障害の早期診断のための客観的脳機能評価システムの確立を世界に先駆けて進めている。
研究成果

1、広汎性発達障害児におけるデータ収集:富山大学と金沢大学子どものこころ発達研究センターの連携のもと、定型発達児童と合わせて、計220名以上の幼児の脳機能データを蓄積した。ま ずは定型発達児において、その生理学的指標の意義を示すため研究を進めた。幼児の左脳のネットワークの発達が、言語発達に関係していることを明らかにし、米国の神経科学誌(Journal of Neuroscience 2011)に報告した。


2、NIRSの幼児用ホルダー及び磁場マーカーコイルの改良:NIRSのホルダーについては、より柔軟なNIRS測定を実現するために、左右を分離することが可能なホルダーを開発した(図1左)。さらに、前頭極を測定するのに簡便に装着可能なホルダーや、自由な部位に装着することに対応可能な薄型ホルダーを開発した(図1右)。さらに、幼児の頭部位置を磁気マーカーコイルで速やかに記録するための、カチューシャ型マーカーコイル(図 2 )を開発した。


図1 NIRSの幼児用ホルダーの改良


図2 幼児用磁場マーカーコイルおよびカチューシャ型ホルダー


3、広汎性発達障害の診断に適した刺激課題および検査環境の確立:幼児がもっとも集中できるアニメーション等の動画を見ている際の自発的な脳活動を記録し、脳内のネットワーク(gamma oscillationなど)(図3)や前頭前野の脳血流を解析することで、診断精度を高められるこ とを確認した(現在投稿中)。



図3 脳内のネットワーク(gamma oscillation)からの診断可能性

4、MEGとNIRSの同時測定:同時測定を行うことで、神経と血管の応答に関連する新しい指標を得られるようになった(図4)。神経と血管の応答性の指標から、広汎性発達障害の診断に役立つ可能性のある指標を得ている。



図4 MEGとNIRSの同時測定による診断可能性

5、確率的脳座標予測システム:MRI撮像なしに、頭表の形から脳の形状を予測するシステムの開発し、現在特許出願の準備中である。このシステムにより、幼児に優しいシステムとしての幼児用MEGの簡便性を高めた。


6、幼児計測に特に有効な頭部移動に対する光学的トラッキングなどの信号処理の改良をすすめ、幼児の頭部の位置がずれても、MEGの仮想センサーが、常に定常の位置で記録できるためのシステムを開発した。

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一般財団法人 北陸産業活性化センター