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ほくりく健康創造クラスター
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研究開発
抗体迅速単離システムと抗体ライブラリー作製基盤技術の開発
研究代表 富山大学大学院理工学研究部 教授 磯部正治
U R L http://pse.eng.u-toyama.ac.jp/life/site7/site/research.html
参画機関 富山大学、第一三共株式会社、アスビオファーマ株式会社
研究概要

われわれは、ヒトはもとより様々な動物種に由来する抗体産生細胞から目的の抗原に特異的なモノクローナル抗体を、大規模かつ迅速に単離するためのシステムを開発した。小胞体選択的蛍光色素を用いた抗原特異的形質細胞の新規同定(ERIAA)法、多数の抗体産生単一細胞から確実に抗体cDNAを自動合成するための懸垂液滴アレイ式磁気ビーズ反応(MAGrahd)法、ならびに抗体cDNAから増幅された抗体可変領域遺伝子断片を一切精製することなく抗体遺伝子発現ユニットに変換する標的選択的連結ポリメラーゼ連鎖反応(TS-jPCR)法を用いて、抗体産生単一細胞から抗体遺伝子を単離し培養細胞で発現させ、培地中に分泌させた抗体を調べることで、最短 4 日間で目的のモノクローナル抗体の単離が可能となった。本システムを応用し、ヒト臨床検体に由来する抗体産生細胞からの抗体ライブラリー作製法を確立した。


研究成果
  抗体は研究試薬や検査診断薬の分野のみならず次世代医薬品開発の有力な素材として期待されている。抗体医薬に用いられる抗体の単離には、ハイブリドーマ法やファージディスプレイ法が用いられてきたが、いずれ手法も目的の抗体単離までに多くの時間と労力を要してきた。

そこでわれわれは、有用抗体の迅速かつ大規模な単離を可能とするため、抗体産生単一細胞由来モノクローナル抗体新規迅速単離システムを開発した。これまで困難であった多数の抗体産生単一細胞から確実に抗体遺伝子を単離するため、平板上に並べた懸垂反応液滴の裏側から磁石を当てオリゴdT磁気ビーズを隣の液滴へと次々と移動させることにより反応を行う、懸垂液滴アレイ式磁気ビーズ反応法(MAGrahd)法を新しく開発した。この原理に基づき、1時間あたり最大144個の単一細胞から抗体cDNAの自動合成を可能とする、単一細胞由来cDNA自動合成装置(MAGrahder)を開発した。

また、得られた抗体cDNAを鋳型に増幅された抗体可変領域遺伝子断片を用いて、一切の精製過程や大腸菌を用いたクローニング過程を経ることなしに、抗体遺伝子発現ユニットの構築を行うための標的選択的結合PCR(TS-jPCR)法を開発した。高親和性の抗体を得るためには抗原分泌に特化し最終分化した形質細胞の使用が有用であるが、これまでマウスとヒト以外では形質細胞を単離するための手法が存在しなかった。そこで、形質細胞では抗体を大量に分泌するために小胞体が発達しているという特徴に着目し、小胞体親和性蛍光色素を用いた抗原特異的形質細胞の新規同定法(ERIAA)を開発した。さらに、この手法を発展させ抗原特異的形質細胞の単離法(ERIAA)の開発に成功した。これらの各要素技術を組み合わせることで、免役された個体からわずか 4〜5 日で目的の抗原に特異的な多数のモノクローナル抗体を効率よく単離することができる新規抗体迅速単離システムを完成させた。さらにこのシステムを用いることで、ヒト臨床検体からのモノクローナル抗体ライブラリー作製技術を確立した。 

これらの成果はこれまでより迅速かつ低コストに有用抗体を多数単離することを可能とすることから、さまざまな分野で役立つ抗体開発に大きく貢献するものと期待される。



図1 ハイブリドーマ法と単一細胞由来モノクローナル抗体迅速単離法の比較



図2 MAGrahd法の原理と反応トレイならびに単一細胞由来cDNA自動合成装置



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