研究代表 | 富山大学大学院医学薬学研究部免疫学 教授 村口 篤 |
U R L | http://www.med.u-toyama.ac.jp/immuno/index.html |
参画機関 | 富山大学、金沢大学、三重大学、富山県工業技術センター、エスシーワールド株式会社、ビバリストヤマジャパン株式会社、北陸電気工業株式会社、愛知県がんセンター |
1.抗原特異的T細胞の迅速かつ網羅的検出・作製システムの開発
個の免疫医療を推進するためには、個々の患者の免疫機能を迅速に解析し、その機能を効果的に増強することが大切である。我々は、免疫細胞の中で、ウイルス感染細胞やがん細胞を認識し、殺傷する機能を持つT細胞に注目し、そのT細胞を迅速かつ網羅的に検出するシステムを構築した。その結果、10日間で、抗原特異的T細胞を検出し、その抗原受容体(TCR)を取得し、機能を検証できるシステム(hTEC10システム)を構築することができた(図1)。hTEC10システムの効果を、実際のヒトリンパ球を用いて検証するために、EBウイルス特異的T細胞の検出及び、そのTCRの作製を試みた。EBウイルスは日本人の大部分の健常人で不顕性感染していることが知られている。我々は12人の健常人ボランティアの末梢血リンパ球の中からEBウイルス特異的T細胞を検出・回収し、hTEC10システムを用いて、そのTCRを回収し、EBウイルスに特異的なTCRが取得できるかを解析した。全体で1277個のT細胞を回収し、428個のEBウイルス特異的TCRを取得することができた。そのTCRの遺伝子をヒト末梢血T細胞に導入することで、導入されたT細胞がEBウイルスペプチド特異的に標的細胞を傷害することも確認できた。
2.がん患者からのがん特異的T細胞の網羅的検出・作製
次に、我々は、hTEC10システムが実際にがん患者のリンパ球の中からがん特異的T細胞を効率よく検出することができるかを検証した。ペプチドワクチンで治療中の肝細胞癌の患者よりhTEC10システムを用いて、がん特異的T細胞を検出し、そのTCRの機能を解析した。 2 人の患者のリンパ球より270個のT細胞を回収し、202個のがん特異的TCRを取得できた。図 2 は、一人の患者の例を示してある。すなわち、患者リンパ球より、73個のがん特異的TCRを取得し、それらが 3 種類のTCRに分類されること(図 2 上)、さらに、そのTCRを発現させたT細胞がペプチドワクチン特異的に肝がん細胞を傷害することを確認した(図 2 下)。
TEC10システムは、今後、個の免疫医療に大きく貢献すると期待される。