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文部科学省地域イノベーション戦略支援プログラム 北陸ライフサイエンスクラスター 国際競争力強化地域 [富山] [石川] [福井]

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総合調整機関 一般財団法人北陸産業活性化センター

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超好熱菌のタンパク質を科学する

バーチャル・サイエンスカフェ

北陸ライフサイエンスクラスター(HLSC)では、カフェのような雰囲気の中でサイエンスを語り合う場をバーチャルで提供しています。第6回目は、福井大学の里村武範(さとむら たけのり)先生から投稿いただきました。

超好熱菌のタンパク質を科学する

 私たちは、水の沸点を超えるような高い温度で生育する超好熱菌と呼ばれる微生物に注目し、この微生物が生産するタンパク質(酵素)の機能を明らかにすることや、応用利用することを目的に研究を行っています。

超好熱菌とは

 超好熱菌は、至適生育温度が80℃以上で、90℃以上でも生育可能な微生物と定義されています。この超好熱菌に分類される生物のほとんどは、生物の進化系統樹において、真核生物、細菌とは異なる第三の生物群であるアーキアに属しています(図1)。したがって、真核生物、細菌には無い新しい酵素、代謝系を持っていると考えられており、有用な生物資源として注目されています。
また、超好熱菌は進化系統樹において例外なく根元に存在することから原始生命体の特徴を多く残していると考えられています。
これらのことから、超好熱菌は、生命の基礎及び応用研究の面において注目を集めている微生物の一つです。

 

図1生命の進化系統樹(Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 87, 4576–4579,1990,を一部改変)赤線で示しているのが超好熱菌

超好熱菌から新しい酵素の探索

 先にも書きましたが、超好熱菌は水の沸点を超える温度で生育することから、この微生物が生産する酵素は、100℃でも全く変性しない耐熱性を持っています。また、超好熱菌の酵素は高い耐熱性だけではなく、有機溶媒や界面活性剤のようなタンパク質変性剤にも高い耐性を示すことが知られています。
私たちは超好熱菌から酵素を精製しタンパク質の立体構造や、酵素の性質を解析することで、なぜ、超好熱菌の酵素は普通の酵素では変性してしまうような条件でも働くことができるのかを解明したいと考えています(図2)。

図2 超好熱菌から分離した酵素の結晶と立体構造(J. Biol. Chem. 287, 20070-20080, 2012.

 また、超好熱菌のほとんどは、アーキアに属していることから細菌や真核生物で見出されていない「新奇」な酵素の宝庫であると考えられます。そこで、私たちは、これまでに見出されていない未知の酵素を見出すために既知の超好熱菌からだけではなく温泉のような高温環境に赴いて自ら分離した超好熱菌を使って未知の酵素の探索を行っています(図3)。

 

図3長崎県雲仙温泉での超好熱菌分離のためのサンプル採取

超好熱菌酵素を使った応用研究

 超好熱菌酵素は、水の沸点を超える温度でも全く変性しないなど他の酵素には見られない非常に高い安定性を持っています。そこで私たちは、この高い安定性を持った酵素を用いてこれまで利用できなかった様々な分野への酵素の応用を行っています。これまでに私たちは超好熱菌の耐熱性酵素の安定性を利用した様々な基質を測定できるバイオセンサや特定のDNAを検出できるDNAセンサの開発に成功しています(図4)。また、酵素の基質となる生体物質を燃料とする酵素電池の作製に成功しています。

図4 超好熱菌酵素を素子としたDNAセンサによる特定微生物の検出(Biosens. Bioelectron. 15(67), 419-423, 2014.

さいごに

 私たちは、超好熱菌の酵素を調べることにより、生命がどれほどの可能性と弾力性を秘めているのか解明していきたいと考えています。
また、超好熱菌酵素の他の酵素には無い優れた性質利用して、これまでに誰も考えつかなかった新しい応用面での展開を探りたいと思っています。

 

里村武範(さとむら たけのり)1975年生まれ
福井大学学術研究院工学系部門 准教授
HP:http://acbio2.acbio.u-fukui.ac.jp/bioeng/suye/

▼事業紹介パンフレット (2MB)