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Toxic AGEs (TAGE) 病因説からみた生活習慣病予防の新戦略

バーチャル・サイエンスカフェ

北陸ライフサイエンスクラスター(HLSC)では、カフェのような雰囲気の中でサイエンスを語り合う場をバーチャルで提供しています。

第4回目は、HLSCの代表研究者の一人、金沢医科大学総合医学研究所の竹内正義(たけうち まさよし)先生からの投稿です。

Toxic AGEs (TAGE) 病因説からみた生活習慣病予防の新戦略
〜食事性
AGEsおよび糖毒性の真実〜

私達のこれまでの糖化蛋白質に関する研究より,ヒトの体内では色々な経路から様々な終末糖化産物(advanced glycation end-products, AGEs)が生成してくることが明らかになっている(図1)。

なかでも,ブドウ糖や果糖の代謝中間体であるグリセルアルデヒドに由来するAGEs(Glycer-AGEs)は,他の経路から生成してくる様々なAGEsと異なって,非常に強い細胞障害性を示すことから,他のAGEsと区別する意味合いで,toxic AGEs(TAGE)という概念を提唱している。TAGEはAGEs受容体のRAGEを介して,糖尿病血管合併症の発症・進展に強く関わっていることを解明してきた。最近では,心血管病,非アルコール性脂肪肝炎,アルツハイマー病,がん,不妊症などの多様な疾患にも関与することが示されており,世界に先駆けて生活習慣病の発症・進展における“TAGE病因説”を提唱した(図2)。

このTAGEが体内で生成/蓄積してくると様々な生活習慣病を発症・進展することが明らかになってきているが,体内でのTAGEの生成/蓄積は私達の日々の食生活に密接に関連していることが分かってきた。すなわち,私達が毎日食べているご飯やパン,麺類などの主食の他,飲み物やお菓子などに沢山含まれている果糖ブドウ糖液糖(HFCS)/砂糖などの糖類の過剰摂取や,飲食品の加熱調理加工の過程で産生される食事性AGEs(主に,ブドウ糖や果糖由来AGEs)の摂取過多によって,体内でTAGEが生成/蓄積されることが明らかになりつつある。

市販の飲食品には,TAGEの生成/蓄積の大きな要因となる糖分が多量に含まれているが,アメリカ心臓協会AHAや世界保健機関WHOは「健康な生活の維持のため1日の糖分(HFCS/砂糖)摂取量を25 g以下に抑えるべきである」とするガイドラインを発表している。そこで,飲料中の糖質含有量を測定したところ,上記の基準値を超すものが半数近くに達することが明らかになった(図3)。また,これらの飲料の習慣的な摂取は肥満や糖尿病のリスクを高めることから,WHOは2016年11月に「糖分を多く含んだ飲料に課税するよう」各国に呼びかけを行なった。

 

さらに,市販の飲料は多量の糖分を含む他,製造加工の段階で糖化反応を起こして色々なAGEs,特にブドウ糖由来のGlu-AGEsを沢山含んでいることが明らかになってきた(図4)。AGEs含有量の多かった飲料としては,乳酸菌飲料,炭酸飲料,果汁入り飲料,スポーツドリンク,果実ミックスジュースなど,特に成分に蛋白質含有量の多い脱脂粉乳とHFCSを含む乳酸菌飲料に多くのGlu-AGEsが含まれていたが,これは見た目や味を美味しくするため,あえてAGEsを作った後に乳酸菌を培養している製品に見られた。実際に,高AGEs含有乳酸菌飲料を正常ラットに投与すると,肝臓内でGlu-AGEsの蓄積をきたすのみならず,飲料中には含まれていないTAGEの生成/蓄積を引き起こす他,RAGEの発現量を増大させてTAGEの作用を増強させることが明らかになっている。

一方,食品類では食品分類法による菓子(スナック類),ドライフルーツ,ケーキ,穀物(そば),調理加工食品などでGlu-AGEs量が高く,特にリジン含量の多い大豆粉や小麦粉と糖類やドライフルーツを成分に含む「栄養機能食品」や「栄養調整食品」,「ドーナツ」などのスナック類に多量のGlu-AGEsが含まれていることが明らかになった(図5)。

これらの結果より,生活習慣病の予防対策の一つとして,糖分やカロリーだけでなく,加熱調理加工に伴って産生される飲食品中のAGEs量にも注意することが重要であることが分かってきた。実際に,腸管内で尿毒素を吸着除去する活性炭のクレメジンを慢性腎臓病患者さんに投与すると,投与後では飲食品中に多く含まれるGlu-AGEsの減少に伴って血中TAGEレベルも低下することが示されている。

加えて,血中TAGE量の変動は現代の生活習慣の特徴である過食,運動不足,糖類(HFCS/砂糖)の過剰摂取,食事性AGEsの摂取過多が引き金となって生じるメタボリックシンドロームやインスリン抵抗性,食後高血糖,脂質代謝異常,高血圧症などと強く関連していることが明らかになっている。私達が提唱している“TAGE病因説”は,種々の疾患の予防から病気の発症・進展に強く関わっていることが明らかになってきており,また血中TAGEレベルの評価は生活習慣病の予防のみならず,早期診断や治療の有効性を評価する有用なバイオマーカーとしての可能性も秘めているものと思われる(図6)。

 現代の食習慣の特徴(ブドウ糖/果糖/AGEs高含有飲食品の過剰摂取)が,体内でのTAGEの生成/蓄積を促進し,生活習慣病の発症・進展に強く関与することから,生体内でのTAGEの生成/蓄積を抑えることが,未病や老化の促進も含めた生活習慣病予防対策の新たな概念を提示するものと思われる。

TAGE関連総説>

1)生活習慣病の発症・進展におけるToxic AGEs (TAGE)-RAGE系の関与:−新たな治療戦略−.金医大誌 37: 141-161 (2012)
http://www.kanazawa-med.ac.jp/koho/sousetsu_takeuchi.pdf

2)生活習慣病の発症・進展におけるToxic AGEs (TAGE) の関与:−新たな予防戦略− 〜食事性AGEsおよび糖毒性の真実〜.金医大誌 40 : 95-103 (2015)
http://www.kanazawa-med.ac.jp/koho/tage.pdf

3)Serum levels of toxic AGEs (TAGE) may be a promising novel biomarker for the onset/progression of lifestyle-related diseases. Diagnostics 6: E23 (2016)
http://www.mdpi.com/2075-4418/6/2/23

竹内正義(たけうちまさよし)
金沢医科大学 総合医学研究所 教授/副所長
http://mri-ages.kanazawa-med.labos.ac/one/
日本糖尿病学会、日本肝臓学会、日本未病システム学会(評議員)等に所属
2013年から2016年まで4年連続で日本未病システム学会 優秀演題賞、平成24年度バイオビジネスアワードJAPAN彩都賞他、受賞多数

▼事業紹介パンフレット (2MB)