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文部科学省地域イノベーション戦略支援プログラム 北陸ライフサイエンスクラスター 国際競争力強化地域 [富山] [石川] [福井]

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総合調整機関 一般財団法人北陸産業活性化センター

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制御性T細胞を「制御」する疾患治療法の探索

バーチャル・サイエンスカフェ

北陸ライフサイエンスクラスター(HLSC)では、カフェのような雰囲気の中でサイエンスを語り合う場をバーチャルで提供しています。第2回目は、富山県立大学の若手研究者 古澤之裕(ふるさわ ゆきひろ)先生から、ご自身の研究テーマをご紹介いただきます。

制御性T細胞を「制御」する疾患治療法の探索

私たちは、リンパ球であるT細胞の中でも、特に「制御性T細胞」(Regulatory T cell)に注目し、Tregを人為的にコントロールする疾患治療法を探索することを目的としています。

制御性T細胞(Treg)とは

私たちの体には、外から入ってきた病原体や異物を排除するための機構が備わっており、それを免疫と呼んでいます。免疫はたくさんの役者が舞台にあがることで構成されており、例えばリンパ球であるB細胞は抗体をつくり、おなじくリンパ球であるT細胞は、病原体に感染した細胞を破壊することで、感染からカラダを守っています。この免疫系が病原体や異物に対して正常に機能しているうちはいいのですが、時に誤作動を起こし、自分自身や、無害なものに対して攻撃してしまうことがあります。その結果おこるのが、大腸炎やリウマチに代表される「自己免疫疾患」や花粉症などの「アレルギー疾患」です。そのほとんどが、根治療法はなく対症療法に留まっており、画期的な治療法の開発が望まれています。

平時は、免疫系が過度に暴れ出さないようにする抑え役のT細胞が存在し、それらは制御性T細胞(Treg)と呼ばれています。攻撃役の免疫細胞(例えば、エフェクターT細胞)と、このTregのバランスが崩れることが、自己免疫疾患の一因といわれており、Tregを制御する新たな疾患治療法が研究されています。

腸内細菌によるTregの制御

腸は最大の免疫組織とされ、全身の70%程度が腸に集中しているとされています。腸管には、異物である腸内細菌が、我々の体細胞数よりもはるかに多く存在していますが、我々はこの異物たちと共存関係を保っています。すなわち、腸内細菌に対する外敵排除のための免疫機構が、腸では抑えられていることになりますが、これを担っているのが前述のTregになります。実際に、全身のTregに比べ、腸ではTregの割合が非常に多くなっていることがわかっています。近年、腸内細菌がみずからTregを誘導する事で、共生関係を保っている事がわかってきました。我々は、腸内細菌が食物繊維を分解し、酪酸を産生する事で、大腸のTregを誘導する事を発見しました。酪酸が作用するメカニズムとして、その標的であるヒストン脱アセチル化酵素(Histone deacetylase: 以下HDAC)を阻害し、Treg誘導に重要なFork head box P3 (Foxp3)という分子を誘導することがわかっています。

 

HDAC阻害によるTregの制御

我々の研究で、酪酸を摂食させたマウスでは、大腸のTregが増加し、実験的大腸炎が抑制されることがわかりました。酪酸は高濃度でしか作用を示さない事から、酪酸自体を全身のTregに応用することは難しいですが、HDAC阻害によるTreg誘導は、大腸炎以外の自己免疫疾患やアレルギーにも応用できないかと期待されます。現在まで、HDACに対してより低濃度で作用する薬剤が開発されており、我々はHDACによるTreg制御機構をより詳細に明らかにすることで、HDAC阻害剤を疾患治療に応用できないか探索しているところです。

古澤 之裕(ふるさわ ゆきひろ) 1982年生まれ

富山大学大学院医学薬学教育部(医学)博士課程修了
独立行政法人理化学研究所特任研究員、東京大学医科学研究所特任助教、慶應義塾大学薬学部助教を経て、現、富山県立大学工学部講師

 

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