研究代表 | 富山大学大学院医学薬学研究部 客員教授・ 富山県薬事研究所 所長 高津聖志 |
U R L | http://www.pref.toyama.jp/branches/1285/1285.htm |
参画機関 | 富山大学大学院医学薬学研究部(医学)免疫バイオ・創薬探索研究講座、富山県薬事研究所、協和発酵キリン株式会社、株式会社池田模範堂、株式会社広貫堂、ダイト株式会社、テイカ製 薬株式会社、東亜薬品株式会社、日医工株式会社、富山化学工業株式会社、株式会社富士薬品、明治薬品株式会社、株式会社陽進堂、リードケミカル株式会社、クラシエ製薬株式会社 |
1 .免疫系または代謝系を制御する天然薬物や化合物を探索するために評価系を確立した。
①自然免疫に影響を及ぼす天然生理活性物質の探索系
②TLR4/MD-2へのLPS結合を阻害する天然薬物の探索系
③IL-5の産生を阻害する天然薬物の探索系
④Th1依存性の交叉提示を増強する天然薬物の探索系
⑤サイトカインによる膵臓ベータ細胞障害を保護する天然薬物の探索系
⑥脂肪細胞の分化に影響を及ぼす天然薬物の探索系
⑦サイトカインによる肝細胞障害を保護する天然薬物の探索系
⑧糖質による膵臓ベータ細胞障害を保護する天然薬物の探索系
⑨免疫抑制因子による抗腫瘍免疫能の低下を改善する天然薬物の探索系
2 .天然資源・合成化合物(計1564個)を用い、上記評価系を用いた一次評価を開始した。
①市販の天然化合物ライブラリー(502種類の構造既知の天然化合物)
② 研究協力機関(8 社)より提供された合成化合物、天然資源、生薬エキス(合成化合物:774種類、天然資源・生薬エキス257種類)
③薬事研究所で所有する化合物・生薬エキス31種類
一次スクリーニングの結果、のべ79個の候補サンプルを得た。代表的な評価結果について説明する。
(1) 自然免疫に影響を及ぼす天然生理活性物質の探索 a. TLR4を活性化する天然薬物: LPS(エンドトキシン)レセプターであるTLR4を発現し、LPSなどのリガンドによるNF-κBの活性化をGFPの 発現で検出可能な細胞を確立した。 既知のTLR4リガンドであるTaxol(パクリタキセル)は濃度依存的にNF-κBの活性化=GFPの発現が認 められた。研究協力機関より提供された サンプルに、TaxolのようにGFPの発現を増加させるものが複数存在した(図1)。 候補サンプルが Taxolのように抗癌活性を有するかどうか、 今後検討を行う。 b. TLR4によるNF-κB活性化を抑制する天然薬物: 上記と同じ細胞を用い、LPSの活性中心であるlipid AによるNF-κB活性化を抑制する天然薬物を探索した。 研究協力機関より提供された 複数の生薬エキス、化合物にNF-κB活性化を抑制する活性を有するものが存在した。 |
図1 |
(2) IL-5の産生を阻害する天然物の探索 IL-5の産生をGFPの発現でモニターできるIL-5/GFPノックインマウスの作出に成功した。ノックインマウスの脾臓よりCD4陽性T細胞を単離し、 Th2条件で培養後、抗CD3抗体で刺激するとIL-5/GFP陽性の細胞群が認められた。既知の免疫抑制剤であるサイクロスポリンAを抗CD3抗体と 同時に添加すると、IL-5/GFPの発現が減少したため、実験系の信用性を確認できた(図2)。 上記の実験系を用いて一次評価を行った。 複数の生薬エキス、 化合物にIL-5/GFPの発現を減少させる活性を認めた。 |
図2 |
(3) 免疫抑制因子による抗腫瘍免疫能の低下を改善する天然薬物の探索系 a. マウス脾臓細胞を用いてNK細胞の細胞障害活性を検討する実験系を確立した。この実験系にTGF-βまたはPGE2を添加するとNK細胞の細胞障害活性が抑制されることを確認した。 b. 白樺樹脂に含まれるベツリンが、TGF-βまたはPGE2によるNK細胞の細胞障害活性を解除することを見出した(図3 )。 その解除活性には、ベツリンの28位の水酸基が重要 であることが示唆された。 |
図3 |